4. 音の到着時間のズレ
== デジタルプリアンプ事始め -室内音響編(4) ==
音の時間のズレ
さて,これまでリスニングポイントで実際に聴こえている音の周波数特性を見てきましたが,そもそも,これらの周波数特性の乱れは,室内反射による音の到達時間のズレが原因で起こったものでした.
音の到達時間のズレは,なにも部屋の壁だけで起こるわけではなく,いろいろなものがあります.
- 部屋の壁,家具,置物などからの反射音
- リスニングポイントから,左右のスピーカーまでの距離の違い
- リスニングポイントから,各スピーカーのスピーカーユニットまでの距離の違い
1)は,これまで一緒にみてきたもので,室内音響最大の問題です.
2)については,よく雑誌などで,正三角形,あるいは二等辺三角形の頂点で聴くように,という話を読んだことがあると思いますが,それですね.リスニングポイントと左右のスピーカーの距離が同じであれば,時間のズレがなくなるというわけです.
3)は,通常,スピーカーには 2つか 3つ,あるいはそれ以上のスピーカーユニットがついています.リスニングポイントと,それらのスピーカーユニットまでの距離に違いがあれば,時間のズレが発生します.
2),3)は正確に言えば,室内音響ではなくて,セッティングの問題ですが,併せて考えておきましょう.
また,以前,トーンコントロールの所でお話したように(デジタルプリアンプ事始め (4)),同じ周波数特性であっても,波形,つまり時間特性は様々でした.周波数特性がきれいなだけでは安心できません.周波数特性と同様に,時間のズレ,すなわち時間特性も測定しなければわからないのです.
インパルス応答,ステップ応答
リスニングポイントでの音の時間のズレは,通常,インパルス応答,またはステップ応答を測定することで分かります.以下はリスニングポイントで測定されたステップ応答です.
横軸は時間(ミリ秒)で,縦軸が音の大きさです.
このスピーカーは 2way なので,スピーカーユニットが 2つあります.この図からそれぞれのユニット(ツイーターとウーファー)からリスニングポイントへの到達時間にズレが 2 m秒 あることがわかります.これが問題を起こします.
幸い,左右のスピーカー(赤と青)からの時間差はない,つまり左右のスピーカーが等距離にセッティングされていることがわかります.
室内音響問題の解決とは
結局,室内音響問題の解決とは,反射によって乱された周波数特性をいかに元の状態に戻すか,また,いかに時間のズレのない波形に復元できるか,ということになります.