室内音響問題とは?
== デジタルプリアンプ事始め -室内音響編(1) ==
室内音響がなぜ問題なのか?
「部屋」という隠されたオーディオ要素
室内音響こそはオーディオ再生上の最大の問題といいました.これはどういうことでしょうか.
音楽を聴くための構成要素を考えると,通常は,音源(CD),オーディオ機器,リスナーとなりますが,音楽を聴くためには(あまり注目されませんが)必ず「部屋」が必要なのです.この部屋が大変な悪さをします.皆さんの持っているオーディオ機器の能力が10だとすると,部屋の影響で,その能力の半分も発揮していないことがほとんどだと言われています.
部屋があると何が悪いかというと,スピーカーから出た音が,部屋の壁,天井,床,部屋の中の家具とかで反射され,その反射音も一緒に耳に届きます.これが良くないのです.具体的に見ていきましょう.
反射が時間特性と周波数特性を大きく乱す
無響室の場合
全く反射音がない状況では,当然問題は発生しません.これは例えば無響室がそれにあてはまり,メーカーが発表しているオーディオ機器の特性はこの状況で測定されたのもです.
このように,スピーカーら出た音の特性が,そのままリスナーの耳に届きます.
リスニングルームの場合
では,最も単純なケースとして,壁からの反射音が 1つだけ発生した場合はどうなるでしょうか.明らかにわかるのは,違う場所から同じ信号が,ある時間差で 2度届くということ.これは音像がぼやける原因ですが,その副作用として耳で聴いた周波数特性が以下のようになります.
なんと,たった 1つの反射音が加わっただけで,スピーカーから出た音のきれいな特性が,リスナーの耳に届いた時には大きく様変わりしています.これはひどい!
この図からわかるように反射音の影響は低音の聴感に大きくあらわれます.ちなみに,もう 1つ反射音が加わると(つまり反射音は2つ),リスナーの耳に届く特性はこうなります.
現実には,反射音は至る所で,文字通り無数に発生するので,状況はどんどん悪化していきます.私たちリスナーがどのような音を実際に聴いているのかは測定しないと分かりません.
これでは,いくら性能のよいオーディオ機器や高価なケーブルを買いそろえても,その能力が十分に発揮できない理由がおわかりでしょう.ちょっと悪くなるのではなく,ものすごく悪くなるからです.
次回はこの問題を,もう少し掘り下げてみたいと思います.