Dirac Live の使いこなし(1) -測定編
Dirac Live の欠点
もう少し暖かい音にならないのか.低音が不自然に響く.音像の定位があまい.音の鮮明さに欠ける.空気感が伝わってこない,など音の聴感上の諸問題を解決するのに従来のオーディオシステムの買い替え,ケーブルの交換,セッティングの見直し等にくらべ,はるかに直接的で有効な Dirac Live ですが,大きな欠点が2つあります.
Dirac Live が十分その能力を発揮するためには,
1.リスニングルームの音響測定が正しくできていること
2.リスナーの音の好みに合った適切なターゲットカーブで設計されていること
が前提となっています.
通常オーディオで音楽を楽しんでいる方は,これらの作業は全くなじみがないのではないでしょうか.
正しい音響測定
Dirac Live によるリスニングルームの音響最適化は,測定されたデータが正しいと信じて行っているので,もし測定されたデータの品質が悪ければ,その能力を正しく発揮できません.どうすれば正しく測定できるのでしょうか.
適切なターゲットカーブ
Diarc Live は「音の見える化」をするため,聴いている音の問題点の把握と検証がとても容易ですが,どういうターゲットカーブが自分の好みなのかを知っている方はあまりいないと思います.
オーディオシステムの買い替え,ケーブルの交換による音の周波数特性の変化は通常測定にかからないレベル,つまり1[dB] 以下ですが,室内音響の問題ははるかに大きな 20 [dB]程度で,ターゲットカーブでそれを最適化するわけですから(特にケーブルの音の違いを判別される方は)ターゲットカーブを1[dB] 以下の精度で追い込んでいく必要があります.
またリスナーの耳の特性も音の好みも一人として同じものはありません.
いったいどのように自分の好みのターゲットカーブを設計すればいいのでしょうか.
音響測定の前に
本稿では1番目の問題,正しい音響測定についてアドバイスをしたいと思います.2番目の問題である適切なターゲットカーブの設計については別途記事にする予定です.
スピーカーのセッティング
Dirac Live はあらゆるリスニング環境に柔軟に対応できるソリューションですが,しっかりとしたセッティング下では更なる最適化の効果が得られます.
- スピーカーをぐらつきのない,しっかりとした台に載せ,できればスピーカー用の小さなブロックの3~4点支持とし,ビリツキ音が発生しないようにする
Dirac Live の音響測定の手順でスピーカーからかなり大きな音でテスト信号が流れますが,このときスピーカーと台のあいだで共振によるノイズが発生するようでしたら,対策をする必要があります.また,部屋にある家具,ドア,窓,小物などからも共振ノイズが発生するようでしたら,ノイズが発生しないように対策してください.
これがスピーカーのセッティングで最低限必要な一番大切なことです.
測定マイクのセッティング
選択した最適化エリアのアレンジメントに応じて,リスニングエリアの9~17カ所で音響測定をしなければなりませんが,測定マイクをどこに設置すればいいのでしょうか.
シートアレンジごとに見ていきましょう.一番基本となるのはイスに代表されるリスニングエリア,Tightly Focused Imaging です.
Tightly Focused Imaging
最初は基本となる Tightly Focused Imaging のシートアレンジです.
このアレンジはリスナーが1人でリスニングルームでいつも同じ位置で聴いている場合に使用してください.
もっとも大切なことは,一番最初に測定するポイントを可能な限り正確に位置取りすることです.いつも座る場所に,いつも音楽を聴くときのような姿勢で座った時の鼻の先の位置で測定することをお勧めします.
なぜこの位置の正確さが大切なのか.それはこの箇所の測定で,
(1)左右のスピーカーから出た音がリスニングポイントに同時に届くように最適化されること
(2)左右のスピーカーから出た音がリスニングポイントに届いたときに全く同じボリュームになるように最適化されること
だからです.
左右のスピーカーの設置は概ねリスニングポイントから等距離になるように設置されますが,全く等距離に設置することはかなり困難です.この部分の正確な調整はこの測定をもとに Dirac Live が行います.これがそろっていないと音像の定位がブレます.
また左右のスピーカーの音圧レベルは製造上,全く同じではなく個体差があります.これをアンプのバランスで等しくなるように調整するのはかなり困難です.この部分の正確な調整はこの測定をもとに Dirac Live が行います.これがそろっていないと音像の定位がブレます.
さて,一番大切なのは最初の設置位置ですが,残りの8カ所については設置場所は大雑把で結構ですが,測定箇所があまり近づきすぎると問題が起こります.最低限下図の間隔をとった箇所で測定することをお勧めします.もちろんこれより広くとっても大丈夫です.
Focused Imaging
次は2~3人掛けのソファー程度のリスニングエリアのシートアレンジです.
2~3人で聴く場合があるでしょうが,イスの場合と同じように,もしそこで1人で聴く場合はソファーのどこに座るかを決めて座ってみてください.そこが一番最初に測定するポイントで,可能な限り正確に位置取りすることです.これが一番大切なことです.
あとはイスの場合と同じで,以下を参照しながらマイクを設置して測定を進めて下さい.注意点としては,ソファーの端の箇所で測定する場合は,ソファーの外側 20 cmくらいの所に設置して測定してください.
Wide Imaging
最後は複数のソファーに渡るような広めのリスニングエリアに対応するシートアレンジです.
これも同様に,一番大切なことは,もしそこで1人で聴く場合どこに座るかを決めて座ってみてください.そこが一番最初に測定するポイントで,可能な限り正確に位置取りしてください.
あとはイスの場合と同じで,以下を参照しながらマイクを設置して測定を進めて下さい.ソファーの端の箇所で測定する場合は,その近くでマイクの設置しやすい箇所で測定してください.
マイクの方向
マイクの方向は 2chステレオとマルチチャネル(サラウンド)で変えることをお勧めします.
通常の 2chステレオの場合は,マイクは左右のスピーカの中間点に向けて水平にしてください.
この場合,マイクのキャリブレーションファイルは必ず 0°(ゼロ度)のものをロードしてください.
マルチチャネル(サラウンド)の場合は,マイクは天井に向け,マイクのキャリブレーションファイルは必ず 90°(90度)のものをロードしてください.
また,マイクと左右のスピーカー間を結ぶ直線上には障害物を置かないようにしてください.これも大切なことです.
以上が正しい測定をするための最低限のアドバイスとなります.
皆さまのご参考になれば幸いです.
ターゲットカーブ編はまた別途投稿予定です.
Dirac Live で Amazon Music HD を聴こう
Windows 10 に限られてしまいますが,各種ストリーミングサービスを Dirac Live で聴くことができます.
SACDに代表されるハイレゾ音源が供給されて久しいのですが,お手頃価格の SACDプレーヤーが手に入りにくくなったいま,もっともお手軽にハイレゾを聴くことができるのはストリーミング,ダウンロードサービスになりました.
PrimeSeat,mora qualitas,Apple Music,TIDAL,Qobuz,Deezer HiFi などありますが,ここでは Amazon Music HD を Dirac Live で聴く方法をご紹介します.
測定用マイクさえあれば 14日間は無料で試してみることができます.
Dirac Live で Amazon Music HD を楽しもう
改めてご説明するまでもなく,最近 Amazon Music HD は Amazon Music Unlimited に統合され,更にお手軽にハイレゾ音源に接することができるようになりました.高音質として供給される音源には以下の種類があります.
PC に接続する USB-DAC に相応の性能のものを使えば,PC が高性能プレーヤーに早変わりです.おまけに音源数は 7500万曲以上!
手順は以下の通りです.既に終わっている箇所はスキップして下さい.
1.Amazon Music HD サービスの登録
2.デスクトップ版 Amazon Music ソフトのインストール,設定
3.Dirac Live Room Correction Suite のインストール
5.Dirac Live による音響測定,および最適化フィルターの生成
6.Amazon Music HD で Dirac Live を使う
1.Amazon Music HD に登録しよう
まずは Amazon Music HD に登録しましょう.既に登録されている方は次に進んで下さい.
https://www.amazon.co.jp/ にアクセスし,左上のメニューアイコンから Amazon Music > Amazon Music HD を選択すると,次の画面になります.
「今すぐ登録する」をクリックすると次の画面になります.ちなみに,まずは無料登録をして,気に入らなければ無料期間中に解約して下さい.料金は発生しません.
「今すぐ始める」をクリック.
2.デスクトップ版 Amazon Music ソフトのインストールと設定をしよう
(※上の手順からの続き)
「ダウンロード」をクリック.
「ファイルを保存」をクリック.
インストーラーをクリックして実行する.
自分の Amazon アカウント情報を入力して「ログイン」をクリック.
デスクトップ版 Amazon Musicソフトが起動します.
右上の人型アイコンから「設定」をクリック.
ハイレゾ音源を聴くために以下の設定にする.
- 音質:HD/Hi-Res
- ラウドネスノーマライゼーション:OFF
- 排他モードを有効にする:ON
次に,Amazon Musicで適当な音源を選択して再生します.すると右下にスピーカーアイコンが現れるのでクリックし,使用する USB-DAC のドライバーを選択してスピーカーから音楽が聴こえることを確認する.
以上で,Amazon Music HD が使えるようになりました.
Amazon Music HD の解約方法
念のため,いま登録した Amazon Music HD サービスを解約する方法も紹介しておきます.無料期間中に解約すれば料金は発生しません.
Amazon のアカウントサービスのページに進んで下さい.
「Amazon Musicの設定」をクリック.
「会員登録のキャンセルに進む」をクリック.
「会員登録のキャンセルに進む」をクリック.
3.Dirac Live Room Correction Suite をインストールしよう
以下の 2つのページに従って Dirac Live Room Correction Suite をインストールして下さい.
4.Dirac Live Processor の設定をしよう
まず初めに Windows 10 のサウンド設定から始めます.
Windows 10 のコントロールパネルからサウンドを開いてください.
「構成」をクリックして,お手持ちのシステムに合ったチャネル数に設定.
「プロパティ」をクリック.
レベルを最大に設定.
エンハンスメントは無効に設定.
詳細タブで,サポートされている最高音質の形式を選択.
排他モードを有効にする.
立体音響はオフに設定.
次に,インストールされた Dirac Live Processor を起動します.
すると,Dirac Live Processor 画面が現れます.
この際,必要に応じて登録の時に作成した Dirac アカウントにログインしてください.
Options から「Audio Settings」をクリック.
お手持ちのシステムに合った設定をしてください.
Output には 先ほど設定した USB-DAC のデバイスを指定.
パラメータの詳細は以下のページの中ほどにある,Dirac Live Processor スタンドアローン スタートガイドを参照ください.
www.aeoliand.com以上で Dirac Live Processor の設定が終わりました.
5.Dirac Live による音響測定,最適化フィルターを生成しよう
まず デスクトップ版 Amazon Musicソフトから,適当な音源を選択して再生します.
すると右下にスピーカーアイコンが現れるのでクリックし,Virtual Audio Device (Dirac) を選択,排他モードを ON にしてスピーカーから音楽が聴こえることを確認する.
この状態で先にインストールした Dirac Live を立ち上げます.
ここから以降の作業は以下のページの中ほどにある「Dirac Liveで室内音響を測定しよう」に従って進めて下さい.
ここまでの作業で室内音響測定,最適化フィルターの生成,エクスポートが完了しました.
6.Amazon Music HD で Dirac Live を使おう
まず,Dirac Live Processor を立ち上げて下さい.Windows 10 のタスクトレイのインジケーターにある場合があります.
エクスポートされた Dirac Live 最適化フィルターがフィルターバンクに表示されているので,好みのフィルターを選択して下さい.
次に Amazon Music ソフトを立ち上げ,音楽を再生し,再生時に現れるスピーカーアイコンから,Virtual Audio Device (Dirac) を選択し,排他モードを ON にしてください(※この作業は,残念ながら,起動時に毎回行う必要があるようです).
これで,Dirac Live で Amazon Music HD を聴くことができます.
フィルターの ON/OFF,フィルターの種類の切り替えは Dirac Live Processor で簡単にできるので,その効果をお楽しみください.
最後に
管理人が推奨している JRiver Media Center は音質に関する性能が保証されていますが,Amazon Music ソフトはその情報があまり公開されておらず,不明な点があるため,いつも最新のバージョンのものを使用してください.(※ v8.7.1.2286 の時点でビットパーフェクトかどうか不明です.識者からのコメントを期待しています)
なお,Windows 10 の全てのサウンド出力が Dirac Live を経由してアンプに送られるため,システム音の扱いには注意してください(コントロールパネルのサウンドで OFFにしておくことをお勧めします).